トリマーとは

トリマーにしかできないこと

痛みや痒みを訴えるペットを動物病院に連れて行き、「ここを痛がります。」「ここに湿疹があります。」と飼い主さんは説明することでしょう。先生は「その部分と周辺」は診るだろうが、私たちトリマーは「その部分と周辺」だけではないのです。身体全部を隅から隅まで手に取って見ています。毛を乾かしながら、根元からすべてを見ています。小さな湿疹やかさぶた、赤み、身体の変化等。「この周辺」だけでなく「こっちもあっちも」。
短毛種であれば自宅でのシャンプーも可能だと思いますが、短毛種であっても定期的に『プロの眼』にもお願いしてほしいと思います。定期的に来店いただくことによって異常を見つけることも可能だからです。

『トリマーにしかできないこと』があると思います。

トリマーとしてできること

ペットハウスMIKIをオープンして30余年。たくさんの犬を見て、触って、そして経験をしてきた中で、いくつかの例を紹介します。

耳の異常
耳掃除で汚れが多い場合、耳ダニや外耳炎・中耳炎の場合が多い。その際は汚れ具合がわかるようにお客様に見せて受診をお薦めします。もちろん、受診しても異常なしの場合もありますが、早期受診することにより異常があった場合は改善も早い。

皮膚の異常
シャンプー後のドライヤーを使いながら皮膚のチェック。ポツンと小さな赤み。よく見ると　小さな小さなトゲがささっていた。
「そう言えば最近指先をよく舐めてました。」
そう言われる飼い主様。これをそのままにしておくとずっと舐め続け細菌感染が広がっていきます。

アレルギー
一番ご相談が多い問題。アレルギーになってしまった場合は食べ物を変えたり薬の服用が必要となります。が、ほんの少しアレルギーになりつつある場合は皮膚の色が赤みをおびたりしていることが多く、その赤みを見つけ、伝えることが第一段階。日頃の生活で変わったことはないか？食事を変えていないか？等伺いながら、できる限りわかる範囲でのご相談はお受けできます。病院と並行しながら改善できればと思います。

歯の異常
年に数度ご来店のお客様。眼の下がガチガチに固まっている。よく見ると目ではなく歯。歯石が溜まり根本まで悪化。化膿して眼の下部分から膿が出てきている。歯石取りと受診をおすすめ。

貧血
定期的にご来店のA様。貧血が気になり受診を何度かすすめた。
「あらそう？今度連れて行くわ」
と言われてはいたが…
数か月後
「ごめんなさい。あなたの言う通りだったわ。私はあなたに何度も受診してねって言われたけれど犬に貧血なんてあるの？獣医じゃないくせに、そんなのわかるはずないじゃないの！と思ってそのままにしていたの。ある日、うちの子が食欲もなく倒れてしまって急いで病院に行ったら
『重度の貧血です。もう少し早く受診されていたら・・・』と言われ、結局手遅れで助からなかったの。」
と、泣きながら電話がかかってきた。悲しいお知らせだった。

会陰ヘルニア
ほんの少しの違和感。
「たぶんこれは会陰ヘルニアだと思うから念のため受診をしてください。違ったら違ったで安心なので。」と早めの受診をすすめた。
受診すると、
「このくらいなら大丈夫です」
とのこと。
しかしヘルニアは大きくなっていく。複数回の受診で「今度手術をしましょう」と。その『今度』がなかなか来ない。
「まだですか？」「そうね、今度しようね」
そして最初の受診から数か月後
「この子はひどいからね～。もう少し早く来ればよかったけどね」
「だから何か月も前から来てるじゃないですか！」
この飼い主さんは別の病院に転院され即手術となった。

子宮蓄膿症
美容後にオシッコをさせた時の帯下の異常。オシッコ後などに粘りのあるおりもの。蓄膿症を疑い受診をすすめる。
この病気は結構な確率でビンゴ。

膝蓋骨脱臼（パテラ）
シャンプー・ドライヤーをすることによってワンちゃんの身体を触る。手の曲げ伸ばし。足の曲げ伸ばし。その過程で気づくのが膝蓋骨脱臼。軽いものは飼い主さんは気づいていない。慣れっこのワンチャンは外れた関節を自分ではめる子もいる。これは受診はもちろんだが、飛んだり跳ねたりさせず、飛び降りも禁止。
「日常の生活を気を付けてください。」
とは言える。それによって早期発見や改善ができればいい。

腫瘍
何回もご来店いただければ、今までこんな腫瘍はなかったとわかる。もちろん腫瘍には良性・悪性とあるが、見つけた時にはお伝えするようにしている。次の日早速かかりつけの病院へ。
「よく見つけましたね。これはかなり進行の早い悪性の腫瘍だから、即手術しないと半年もたなかったよ」
と。腫瘍を見つけお伝えした時に、飼い主さんはまだ気づいていなかった。受診後の結果を連絡いただき、見つけてくれてありがとう。と泣きながらお礼を言われた。

妊娠
定期的に美容に来られるお客様。男の子と女の子の飼い主。女の子の方に身体に変化が見られる。
「妊娠してますか？」
「いえ、してません。発情の時は離してましたので」
「お腹は大きくはないけれど、身体の変化が見られ、妊娠をしてる感じがあるので、来週の予防注射の時に先生にチラッと相談してみて下さい」
とだけ伝えておいた。
次の美容の時、
「ほんとに妊娠してました！ミキさんに聞いてなかったら知らないまんまでした。よかったです。ありがとうございました」
「正解でよかったです。」
この子は赤ちゃんが大きめで出産が大変だったようだ。無事に出産できてよかった。

トリマーだからできること

ワンちゃんが訴える痛みや痒み。
それを症状が出る前に見つけることが可能なのは『トリマーだからできること』
もちろん完全ではありません。あくまでも可能性として。
長い経験と、たくさんのペットに触れさせていただいたからこそできる事でもあります。
私たちトリマーの仕事はワンちゃんの美容だけでなく、体調の変化にも気づくこと。
皮膚や病気の早期発見。獣医や飼い主さんよりも先に発見することもあります。
少しでもお役に立てるならと、日々努力をしていきます。